博物園歳時記
2014年03月12日(水曜)
 日本変形菌研究会大会と南方熊楠の世界
 去る3月9日(日)大阪市立自然史博物館において標記大会が開催されて、当園と共催開催「森の宝石」変形菌観察会の講師である川上新一氏(山形県立博物館)が「変形菌入門−変形菌の楽しみ方」として公開講演をされました。また隣の和歌山県は、博物学の巨星、粘菌を日本に広めた南方熊楠発生の地であり、一路紀伊半島を南下して川上氏と熊楠ゆかりの地を訪ねてきました。
 日本変形菌研究会大会は隔年で関東と大阪で開催されており、今年度は大阪大会ということで上記博物館にて行われました。公開講演会には120名程の来場者があり、やはり大都市での開催は、変形菌の関心度が高く研究をされている人が多いと感じました。川上氏出版の「変形菌ずかん」(平凡社)の販売もありサイン会など川上氏は大忙しでした。(当園にてもサイン本販売しております)
 南方熊楠(1,867.4.15〜1,941.12.29)は、博物学者、民俗学者、日本初のエコロジストとして、日本にとどまらず世界を駆け抜けたまさに博物学の巨星、生態学の先覚者です。その世界に触れるたびに偉大さを実感しました。昭和16年享年75歳で亡くなるまでの25年を過ごした田辺市にある南方熊楠邸は、展示のため整理整頓されてはいるものの、研究に使用した遺品や書物、庭の植物などから熊楠の息吹を感じることができます。隣の顕彰館には、書庫にあった二万五千点に及ぶ資料が収蔵されて、熊楠の膨大な業績と交流に触れ理解を深めることができます。しかし、その膨大な資料にただただ驚くだけでした。白浜町にある南方熊楠記念館は、遺品の展示が多く青少年から海外、交流した人々、植物学、民族学とコーナーごとに収められてじっくり目を通すことができました。屋上からは、神社合祀に反対の折強く保護を訴え、命がけで守った神島(国の史跡名勝天然記念物)が田辺湾に浮かぶ光景に感動しました。また、360度のオーシャンビューに観光地として名高い白浜の景色に歓声を上げました。
 山形県立自然博物園では、26年度6月3日〜7月31日まで「ふしぎな生きもの粘菌」〜きもかわいい!森の宝石〜として展示会を開催します。今回の視察を活かして魅力ある展示会にしたいと思っております。期間中には川上氏と座談会や観察会、子供も楽しめる粘菌広場の開催なども企画しております。偉大な熊楠に近づくことはできないとしても、熊楠の生態学や思想には少なからず近づくことになり、自然に興味を持ち自然の素晴らしさの再発見になることと思っております。(スタッフ:まなべ)
大阪市立自然史博物館講堂で川上新一氏(山形県立博物館)公開講演会す
講演終了後、川上新一氏出版「変形菌ずかん」(平凡社)サイン会に購入者の列
田辺氏にある南方熊楠顕彰館の収蔵庫
昭和四年六月一日、昭和天皇御進講の折、粘菌標本をキャラメル箱に入れて進献した
顕彰館隣りにある南方熊楠旧邸
旧邸の裏には研究の拠点となった書斎と書庫
庭にあるこの柿木から発見した粘菌がミナカテラ・ロンギフィラと命名
南方熊楠翁のお墓がある高山寺
田邊乃三人の偉人、南方熊楠・植芝盛平・武蔵坊弁慶
白浜町番所山にある南方熊楠記念館
昭和天皇歌碑「雨にけふる神島を見て紀伊の国の生みし南方熊楠を思ふ」
記念館屋上からは神島はもとより360度のオーシャンビュー