月山学講座 第4回・月山に大雪を降らせる気象のメカニズム |
講師 ◇山形地方気象台 防災指導係長 中村記之氏 気象情報官 上野純一氏 |
2009年12月13日(日曜)開催 |
□テーマ ◎月山に大雪を降らせる気象のメカニズム ■ポイント1 月山の積雪は異常に多く、志津地区の積雪量は集落として世界一か 気象台としては、各地の積雪のデータが少なく、比較することができないとのこと。月山に何故これほどの雪が降るのかということは、地元や私たちインタープリターにとっては極めて大きなテーマなのですが、気象庁にとってはそれ程の関心事ではないということでした。 地域性を極めるためには、それぞれの地域が、独自のデータ蓄積と研究が必要であることを痛感しました。 志津地区の雪のデータとして現在蓄積されてあるのは @山形県から委託‥清水屋旅館前で毎日計測(降雪量、積雪深、最高最低気温) A最上川管理所が設置している自動降水量計測器‥つたや旅館前 B新庄雪氷研究所が設置している自動積雪計測器‥志津駐車場北側及び姥沢駐車場 このように志津地区ではデータが豊富で、且つ、清水屋旅館が計測している手法は目視なので判り易く、いつも聞くことができます。雪は、やがて水になるのだから、降雨量として測って何ら問題はないわけですが、雪は降雪量として示した方が腑に落ちるものです。 とはいえ、月山山頂部の積雪量は依然として不明で、今回上野氏が調べてくれた資料は、極めて貴重なデータで、万年雪となる大雪城の積雪が30mを超えるという根拠が判りました。 最近は、積雪深を競う傾向があるので、誰もが自慢げにオーバーに言うように思いますが、方々で積雪の測定に関心をもっていただければと思いました。国土地理院の地形図を描く技術力を考えたら、そんなに難しいことではないと思うのですが。是非とも気象台の課題にしていただきたいと思います。 ■ポイント2 何故、月山に大量の雪が降るのか この点に関しては、気象台とインタープリターのせめぎ愛があって面白かったです。気象のメカニズムは、シベリア高気圧と日本海という温泉浴場、そして脊梁山脈が基本となります。天気図を活用した、臨場感ある解説は参加者を引きつけ、日本海側に大雪を降らせる気象のメカニズムがばっちりと理解することができました。 月山学参加者の問題意識は、更に、何故似たような山がいっぱいある中で、殊更月山周辺に、万年雪になるほどに雪が降るのか、ということですが、この点については前記したように、比較するデータがないので何ともいえないということでした。 でもその中で、それぞれがねばって深められたことは、雪雲というのは強風を伴うこと、月山山頂辺りの上空2000m辺りは風速30mを超えること、その雪雲が山にぶつかって、風向きの反対側に大量の雪を落とすこと、そのために東側と東南側には雪庇ができ、雪崩が起き、吹き溜まりができるということが判りました。 更に、それが月山では地形的な特徴があって、より反対側に積もりやすいのではないか、ということですが、それを論じるには、様々な山の積雪量のデータと地形的な検討が必要となるということです。 その他に、両氏からは、事前に提出していた素朴な質問に丁寧に説明していただき、ほんとうに感謝申し上げます。 文責:博物園スタッフ 横山 |