闇夜を漂うホタルの光は幻想的で綺麗ですね。幼い頃や、昔の風景を思い出すようなノスタルチックな気持ちにもさせてくれ、穏やかな気持ちにさせてくれるから不思議です。そんなホタルが博物園内にもいます。
博物園を舞うホタルは「ヒメボタル」。ゲンジやヘイケボタルより小柄で寿命も短く、限られた環境の中で生活し、どのホタルよりも輝きがまぶしいホタルです。ホタルは水生幼虫で光る虫、って皆さん思っていませんか?ホタルと言えばゲンジやヘイケボタルが代表的でそれが一般的だと思われても仕方ありませんね。でもそれは例外で、日本には40種以上のホタルがいて、水生で光るのは極々少ないのです。そしてヒメボタルも陸生で一生を暮らします。陸に棲むオカチョウジガイや小型のカタツムリを食べて育ちます。その捕食する貝がいることが大事な環境なんです。さらにこのヒメボタルは、なんと雌は飛ぶことができないのです。それで移動する範囲が狭いと言うことで、環境の維持がもっと大事になってくるわけです。
観察会夜はあいにく小雨模様になりましたが、ホタルが舞う条件は暖かく風がなく月明かりのない夜です。どれも満たしているので少々の雨なら大丈夫ということで、8時前くらいからスタンバイ。ヒメボタルの「ホタル時間」は8時ころからです。輝きはじめました。一つ、二つと明るいフラッシュ光でコミュニケーションの始まりです。もちろん飛んでいるのはオスで、1秒間に約1回の点滅です。林縁で輝くホタルや、目の前を舞うホタルにしばし見とれました。ホタルの数は多くはありませんでしたが、ヒメボタルの輝きに魅了されたホタル時間でした。
前述したようにヒメボタルの生息環境は限られています。発光は配偶行動の為のもので、オスとメスのコミュニケーションの一つです。ホタル観察時は灯りをつけない事や、生息地を踏みつけないことを守り、静かに観察するようご協力をお願いします。
実は続きがありまして、観察会は9時に終了しましたが夜空を見上げると雲の合間から星が輝き始めたので、もう少しホタルを眺めながら夜空が晴れることを待っていたのです。待つこと一時間望み通り雲がなくなり満天の星空にまで広がりました。足下のヒメボタルの輝きと、西天のうしかい座の一等星アークトュールスが同じような輝きです。天頂では天の川の中をはくちょう座が飛んでいて、こと座とわし座の一等星を結べば夏の大三角です。北点には北斗七星が湯殿山に柄杓を傾ける様子で、カシオペア座と距離をはかれば北極星がわかります。南の空には、南斗六星が目印のいて座、その隣には赤い心臓をもつさそり座が見えます。星の輝きに加え流れ星も流れて、流れた星はまるでホタルに変わったように足下で輝きます。
こんなドラマチックな夜に演出してくれた自然に感激し感謝です。
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